命を育てる

毎年この時期になると、園庭にアゲハ蝶が飛んで来て、ゆずやみかんの木に卵を産みます。

葉っぱの表や裏をよく見ると、黄色の小さな丸い卵をみつけることができます。
とても小さいので、なかなかみつけるのは難しいのですが、みつけた時はとても嬉しく、その卵の可愛らしさと美しさにワクワクします。

子どもに命を育てるという経験をさせる事は、とても大切です。
毎日様子を観察し、様々な変化に気づいたり、何を食べさせたら良いのか、どうやってお世話をしたら良いのかなど、いろいろな事を考えたり、調べたり、発見したりすることができるからです。

わからないことが次々に出てくるので、図鑑で調べたり、葉っぱを毎日取り替えたり、ふんを片付けたり、やらなくてはならないことがたくさんあります。
卵から、黒い幼虫になり、ある日その黒い幼虫が「はらぺこあおむし」のように緑色になっているのを発見すると、とてもびっくりします。

幼虫が大きくなるにつれ、ふんも大きくなっていったり、お世話をしようとちょっと幼虫を触ると、頭からオレンジ色のツノのようなものを出し、臭い匂いを出すのにも驚いたり、面白がったりします。

生き物を育てる事を通して、知的な面でたくさん刺激を受けるのです。
驚きや疑問を感じ、それが知的好奇心を育てます。

やがて、幼虫は動かなくなり、サナギになります。
初めてサナギを見た年少さんの子どもたちは、どうして動かないのかとても心配します。
しかし、何日かして朝登園してくると、サナギが綺麗な蝶になっているのを発見すると、とても興奮し喜びます。

私は、目の前でまさに蝶がサナギから出てくる瞬間を見たことがあります。
あまりにも素晴らしく感動して涙が出たのを覚えています。
それほど、生き物というのは神秘的なものです。

クラスで育てた幼虫は、蝶になると子ども達全員で園庭に出て、みんなでお別れをします。
お部屋で育てているうちに、幼虫にも名前がついているので、皆口々に「○ちゃーん、元気でねー」とか「さようならー」と思い思いの言葉をかけ、蝶が飛んでいくのを手を振って見守ります。
時には、お別れが寂しくて泣いてしまう子もいます。
そういうお子さんには、「お空を飛んで好きなところへ行かれて嬉しいんだね。また、みんなに会いに来てくれるかもしれないね。」と言うと、少し安心して笑顔になります。

時には、幼虫がうまく育たないこともあります。
しかし、そういう経験も大切です。
命の大切さ、尊さ、責任感、思いやりなど様々な事を考える機会になるからです。
虫を育てる経験を通し、知的な面だけでなく心も大きく成長するのです。

今はご家庭で、犬や猫などを飼うのは難しいと思いますが、小さな虫なら育てられるかもしれません。
機会がありましたら、是非お子さんと卵や幼虫をみつけてみましょう。

2020年05月13日